本作『大英博物館プレゼンツ 北斎』は2017年5月~8月にかけて大英博物館で開催された展覧会“Hokusai: Beyond the Great Wave”をフィーチャーし、展覧会の舞台裏や北斎の作品を今までにない驚くべき詳細さで体験することができる、北斎に関する映画としては初の長編ドキュメンタリーである。

 

同展覧会では希少な初の展示物を始め、北斎の生涯、特に肉筆画を中心に還暦以降の30年に焦点を当て、90歳まで描き続けた北斎が追い求めた世界に迫る。日本、フランス、イギリスをめぐり、最新技術で撮影された北斎に纏わる奥行きのある映像も見逃せない。

 

イギリス人芸術家デイヴィッド・ホックニーや新進気鋭のニューヨーク在住の日本画家・出口雄樹など、北斎という日本の偉大な巨匠の研究に情熱を燃やし、影響を受けてきた学者たちやアーティストの協力により実現した。ホックニーは“偉大な芸術家は年を重ねるごとに進化する”という北斎の信念を交えながら、その長きに渡った意欲的な芸術性の追及に迫っていく。

 

日本を代表する画家・葛飾北斎の全容を劇場で体感できる。

 

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

冨嶽三十六景 凱風快晴

『大英博物館プレゼンツ 北斎』は、世界的に著名な日本の芸術家、葛飾北斎(1760-1849)をイギリスで初めて取り上げた展覧会を、映画で見られる画期的なドキュメンタリー作品だ。北斎という日本の偉大な巨匠の研究に情熱を燃やし、影響を受けてきた学者たちやアーティストたちの協力により実現した本作は、イギリス初の北斎に関するドキュメンタリーである。本編の最後には、世界五大美術館の一つである大英博物館で開催された展覧会“Hokusai: Beyond the Great Wave(北斎―大波を超えて)”をまさに独り占めの状態でじっくりと味わうことができる。案内人には美術史学者のアンドリュー・グラハム・ディクソンと共に、陶芸の現代作家グレイソン・ペリーら、アーティストたちを迎え、映画鑑賞者のために特別に作られた大画面ガイドツアーとなっている。

 

日本の映像技術が駆使され、北斎の作品を今までにない驚くほど隅々まで見ることができる。また、北斎の木版画や絹に描かれた絵画を再現する日本の職人技を通して、その崇高な芸術を掘り下げていく。

北斎の代表作である「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は世界中で「The Great Wave(大波)」という名で親しまれ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」やジョン・コンスタブルの「乾草の車」と同様、広く知られ多くの手本となっている。「神奈川沖浪裏」や「冨嶽百景」をはじめとする北斎の作品は現代アートに変化をもたらし、モネやゴッホ、ピカソなど多くのヨーロッパの芸術家に多大な影響を与えた。北斎は作品がスマートフォンの絵文字になった唯一のアーティストで、現代漫画の生みの親であり、今日も多くのアーティストに刺激を与え続ける存在なのだ。

 

日本、米国、イギリスで撮影されたこのドキュメンタリーには、本展覧会を担当したキュレーター、ティム・クラーク、そして北斎の研究に50年近く情熱をささげてきた学者ロジャー・キースも登場。美術史におけるデジタル化の可能性を探求しながら、長年の間に培った知識に基づき、日本の最新技術を使って版画や絵画に従来とは異なった視点をもたらす。その過程で彼らは、名作の新たな解釈を明らかにし、世界的な巨匠としての北斎による卓越した業績のすべてを紹介していく。

イギリス人芸術家

デイヴィッド・ホックニー

北斎研究者

ロジャー・キース

大英博物館「北斎」キュレーター

ティム・クラーク

北斎は生涯を通じて“人”に強い関心を持ち、常に“人間”という存在を称えてきた。また同時に自然や精神世界も深く探求し続けた。日本が世界から大きく隔絶していた1760年の日本で生まれ、その人生のほとんどを江戸の町(現在の東京)で暮らし働きながら過ごした。キャリアの初期には、一般的な浮世絵(遊女や歌人、歌舞伎役者を画題とした「浮世」の芸術)のスタイルを習得したが、後の作品ではより自然に傾倒し、とりわけ北斎が長寿の聖なる源、さらには不死の象徴とした富士山から数多くの作品を生み出している。

 

北斎の「漫画」や版画、絵画からは彼の持つ人間に対する寛容なまなざしと、包容力が感じられる。滑稽さ、力強さ、日常性、荘厳さなど、人類すべてを称賛する作品になっているのだ。そして彼自身もまた、人生における成功と挫折の劇的な落差を味わってきた。

 

60歳になった北斎は、社会的にも認められ順調そのものの人生を送っていたが、そのわずか数年後に悲劇と惨状が襲うこととなる。まず妻を亡くし、彼自身も脳卒中に倒れた。さらに孫によって破産に追い込まれた北斎は、やはり芸術家として成功を収めていた娘の応為(おうい/お栄)と共に、最期を貧困の中で暮らした。しかしながら、北斎は自身の有名な言葉、“110歳でようやく完璧な技術を手に入れることができる”という信念に向かって、努力し続けることを決してやめなかった。まだ平均寿命が45歳だった時代に、北斎は90歳まで人生をまっとうし、晩年には最も圧倒的かつ美しい作品を残している。亡くなる前の数か月の間に描かれた最後の富士画では、神聖な山の頭上に浮かぶ黒雲に乗った龍が、天に昇っていく様子が描かれているが、これは北斎の不死に対する希望の象徴と言えよう。我々が知っての通り、彼はまさに不死を手に入れたのである。

 

印象派やその他の芸術家に見い出され、尊敬され、手本となった北斎は、今日も世界で最も重要な芸術家として広く認識されている。今回のドキュメンタリーおよび展覧会によって、北斎の驚くべき物語をさらに多くの人々が知ることとなる。

監督:パトリシア・ウィートレイ 提供:大英博物館

ナレーション:アンディ・サーキス 出演:デイヴィッド・ホックニー、ティム・クラーク 他

2017/イギリス/87分/英語・日本語 原題 British Museum presents: Hokusai

後援:ブリティッシュ・カウンシル 協力:浦上蒼穹堂 すみだ北斎美術館 凸版印刷株式会社

配給:東北新社 配給協力:DBI INC